【クリス・レイ】
ただ、画家としての夢を追い掛けたかった。
それだけ…
俺は、私立の講師として働いている。
講師…と、言っても授業中、アドバイスをしたり
質問に答えたりすることが主で、あとは雑用が多い。
どちらかといえば、教師のサポートをするようなもの。
『もう、才能がないことなんてわかってるだろ?
いい加減諦めて、仕事をしろ。』
『俺は、諦めません。』
そう言って、家を出た。
"ここは、自由に使っていいよ。"と、一番最初に言われた。
教師ではない俺は、職員室に机がない。
だから、俺は普段この美術準備室にいる。
自由な時間は、作品を作ることに専念する。
美術準備室は、俺のアトリエと化している。
「先生…クリス先生?」
とある生徒が俺に声をかけた。
「…あ、すまん。ぼーっとしていた。」
「空の色が出せないんです…」
「青ばかり、使っていても…この聡明さは出せないよ。」
外を見ると…
真っ青な空、そして入道雲が現れれていて
暑い暑い夏が、始まろうとしている。
下には、部活動をしている生徒の騒めき
吹奏楽部の練習の音
そして…時折聞こえるピアノの音…
と、思ったが随分聞いていない気がする…
「いろんな色を使うんだ…それか…」
「それか?」
「上から塗った色を塗り足していくんだよ。」
「塗り重ねても、下の薄い色は混ざらない。」
「それが、今使っているアクリル絵の具の特徴だから。」
美術部員は、彼一人
と、いっても本当の部員ではない。
勝手に絵を描きにきて…
俺に質問するんだ。
彼は、他の冷やかしの生徒と違って一生懸命絵を描く。
あまりにも下手過ぎて、いじめを受けたのがきっかけで
心を閉ざしていたらしい。
俺もそうだった…ヘタだと馬鹿にされたから
人一倍技法をしり、絵画を見に行き…
絵と言うものの魅力に憑りつかれた。
だから、彼に同情したんだと思う。
人と関わりたくなかったが、
絵を描きに来ることを許してしまっていた。
「最近は…ピアノの音が聞こえなくなったような気がする…」
つい、声が出た。
「今まで、僕は聞いたことないんですが…」
彼は、一か月前からここにきている。
そうか…?
そこまで過去の話だったのか??
そんなとき…
彼がやってきた。「…あれ?美術部なんてあったんだ。」
と、入口付近で声がした。
「い…イーシンくん?」
と言い、ビックリしている生徒…。
「わーいいな、僕も描きたい。」
速足で、中に入ってきた。
「君は…確か」
「2年Y組イーシンです。」
「ああ、そうか。」
見たことあるような…?
ないような…?
思い出せない…。
「僕も、時々ここにきてもいいですか?」
「あ…ああ、別にいいけど。」
「わぁい!」
エクボを作って笑った。
「じゃあ、早速カバン持ってきます。」
と、消えるように去っていった。
パタン…
と、ドアが閉まると彼が言った。
「先生、いいんですか?」
「え?」
「彼は…その」
言いづらいのか…消え入りそうな声…
「なんだ?」
「約1年間休学してた生徒ですよ…?
当時の音楽の先生をたぶらかしたって噂です。」
たぶらかす?
そんな風には全く見えなかった。
確か…そんなことを誰かが言っていたような気がする。
あまり興味がなくて聞き流していた。
「体育の先生が見つけたらしくて…」
と、くどくど話始めた。
俺は、自分の作品の手直しをする。
話に夢中になっていて
俺が話を聞いてなかったことに気づかなかったらしい。
「と、とにかく…!先生も気をつけてください!!」
「え?俺か?大丈夫だよ、俺は男だし。」
「…そうですか?」
ホッとしたように見えた。
「ほら、手が止まってるよ。」
「あ…はい!」
彼は、再び絵を描き始めた。
****************
イーシン…は、
鉛筆だけ持ってきていた。
それで、彼は何やらか描きはじめた。
ずっと話さずに、隅でじっと一人でいるようなタイプだった。
どうかなと思い俺から
彼に話かけてみた。
「どうだ…?」
「あ、先生…。」
集中しているようで俺に気づかなかったみたいだ。
特に質問もなく…描いている
だから、つい、俺から話かける
「これは、何?」
描いている絵を指差す。
「…わかりませんか?」
わからなかった。
風景や、人物ではない。
「ふふっ…ナイショです。」
その、可愛らしい笑いかたは
魅力的だった。
彼と、彼の絵に興味をもった。
左のカウンターが
10000になった方!
お好きなカプで、お好きなシチュエーションのお話を書かせていただきたいです!
拍手コメまたは、コメント欄などでお知らせください(*´ω`)
よろしくお願いいたします。
FC2ブログランキング
にほんブログ村いつもありがとうございます^^