【セフン・シウミン】
たまたま、足音が聞こえて隠れてしまった。
そして、
全部…聞いてしまった。
明日、会うのか…
指輪について楽しそうにしていたしうひょんとは少し違った気がする。
まさか…
上手く行ってない?
いや、喜ぶのはまだ早い。
これまでも、二人は何度も別れて元サヤに戻っていた。
宿舎をこっそり抜け出し、
「別れたい」と言う
彼女を慰めに行く。
その度に、一喜一憂してきた。
多分今回もすぐ元に戻る。
会えるなら尚更…。
―翌日―
いつもより、そわそわしたしうひょん。
今日は、彼女と会う予定。
仕事が、長引いて…会えなければいいのに…
***************
「スホ、ちょっと外出してくる。」
仕事は予定通り終わり、しうひょんが、私服に着替え玄関に向かう。
「わかった…。ペンや、カメラには気をつけて。」
スホひょんは彼女に関しては深く言えないみたいだ…
様子を見に行こうと、一瞬思ったが、
彼女を見たくもなかったので
やめた。
結局、元に戻るだけ。
僕は、見守るだけ。
19時…いつものカフェで1人…彼女を待つ。
会った時、彼女は指輪をしてくれているだろうか?
久々に、何を話そうかな…?
スホには、スキャンダルにならないように釘を刺された…けど。
バレても構わない。なんて思った。
それくらい…
アイツが大事だ。
繋ぎ留めておきたいんだ。
ガラス張りの店内で、外が見えるカウンターに座る。
「あ…」
雨だ…
しうひょんは…濡れてないかな…?
「しうちゃん、傘持ってったかな~…?」
るぅひょんが、ベランダを見ながら言った。
「さぁ…彼女と、相合い傘でもしてるんじゃないですか?」
考えたくもないのに、容易に想像できる。
「そっか。心配する必要ないか。」
るぅひょんは、カーテンを閉めた。
ないですよ…。
期待しただけ…空しいだけですから。
―深夜0時―
「繋がらない…。」
スホひょんが、帰らないしうひょんの携帯に何度もかけ直す。
「まさか…お泊まり?!」
るぅひょんが騒ぎ立てる。
生々しすぎて虫酸が走る…
本当にやめてほしい。
「それだけは、絶対駄目だ!」
苛立ったスホひょん…
マネージャーに言わないようにいろいろと、考えてみてるみたいだけど…。
早く、言えばいいのに…
そうすれば、今後外出なんかしないだろうし…
ドサッ 玄関で大きな荷物が倒れたような音がした。
「?」
みんな、気付かないみたいで
一人で玄関に向かう。
まさか・・・
「しうひょん?」
ずぶ濡れのしうひょんが倒れていた。
咄嗟に抱き上げる。
余程辛かったのか、抱き上げたら首に腕を回された。
ドキッとしてしまう…
「スホひょん、しうひょん帰ってきました。」
「え?!」
心配したみんなが駆け寄る。
「ミンソク!どうしたんだ?!」
ソファーにしうひょんを寝かせた。
「傘…忘れて」
「と、とにかく着替えないと!」
スホひょんがしうひょんの着替えを探しに向かった。
彼女は、来なかった。
カフェの営業時間が終わり、
外で待っていたが、雨を避けるものがなかった為、こんなに濡れてしまった。
指輪を、指先で弄り…
無意識に何度もキスをしていた。
それだけで、時間なんか気にならなかった。
気づいたら、深夜になっていた。
スホから、何度も電話、メールが来ていた。
帰ろうと思ったら…
体がちょっと重かった。
まさか、太ったのか?
さらに自己管理しないと…
重い体を必死に動かしてたら、
宿舎についた頃には息も絶え絶えだった。
ふわっと…
誰かが、俺を抱き起こしてくれた…
久々の人肌を感じて…すがり付いてしまった…ような気がする。
今日はリビングに寝かせてもらった。
「明日は、朝は練習だけだから、休んで。」
スホが言った。
「いや、大丈夫。」
「駄目に決まってんだろ?!」
「…すまん。」
「とにかく、帰ってきてよかった。」
心底心配させてしまったみたいで申し訳なく思う。
ごめんな…こんなひょんで・・・
「ありがとう。明日午後から頑張るよ。」
夜、リビングにいるしうひょんの様子を見に行く。
勝手におでこの冷却シートを張り替える。
「うぅ…」
少し、うなされているみたいだ。
そっと、手を握る。
熱い…
指に固いものが当たる…
忌々しい指輪だ…
しかし、しうひょんが何度もキスをしていたのを思い出す。
しうひょんがするように…
僕も指輪にキスをする…
そして、手の甲に…
無駄な、行為を暗闇の中で繰り返した。
こんなことをしても手に入ることはない。
しうひょんが、同性に好意を持つなんて有り得ないのだから…
せめて、せめて今だけ
この一瞬だけ
この忌々しい指輪を・・・僕と貴方のものだと感じたい。
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